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男子日本代表:ディベロップメントキャンプレポート「足と頭をすごく使うキャンプでした」小川敦也選手
 男子日本代表「ディベロップメントキャンプ」では、若手選手に対してトム・ホーバスヘッドコーチが目指すバスケットボールスタイルを伝える機会となりました。まもなく2月23日(木)より、FIBA ワールドカップ アジア予選 Window6が群馬県・高崎アリーナにて2試合行われます。その強化合宿に参加するチャンスをつかむべく、選手たちは持てる力を発揮しました。

 今年6月にはFIBA U19ワールドカップがハンガリーで、7月には延期されたFISUワールドユニバーシティゲームスが中国でそれぞれ開催が予定されています。U22日本代表の網野友雄ヘッドコーチとU19日本代表のアレハンドロ・マルチネスヘッドコーチをはじめ、各カテゴリーのスタッフも参加。ホーバスヘッドコーチは「私自身が他のコーチから勉強したいです。特にアレハンドロヘッドコーチはスペインのバスケを熟知しており、FIBAワールドカップで対戦するかも知れません。バスケに対する私の考えと似ている部分も多いですが、違う考えもあります。バスケに100%の正解はないので、いろんな意見をもらいながら勉強しています」。練習前後にはコーチミーティングを行い、目指すべき男子日本代表のスタイル確立へ向けて英知を集結します。

 「コーチとして学ぶことを止めたら引退すべきだと思っています」と話すのは、アレハンドロヘッドコーチです。コーチミーティングでは「アイディアを伝え、情報共有することで私にとっても学ぶことが多かったです」。昨年のU18日本代表選手から4人が参加(湧川颯斗選手、坂本康成選手、星川開聖選手、川島悠翔選手)した今キャンプ。「今後のキャリアにとっても、大事なキャンプになりました。中学から高校、またアンダーカテゴリーの日本代表として毎回ポジションが変わることがあります。今回のキャンプもそうであり、彼らにとっては挑戦です。このキャンプだけで評価することは絶対にできません。先を見据えて成長を見守っていくことが大切です」とアレハンドロヘッドコーチが言うように、若い選手たちは多くのことを吸収しています。

 高校生たちは、ひとつ上のカテゴリーである大学生にも見劣りしないプレーで、ホーバスヘッドコーチを感心させていました。最年少の川島悠翔選手(福岡大学附属大濠高校2年)は昨年、U16、U17、U18と3つの国際大会を経験し、FIBA U16アジア選手権ではMVPを受賞。ホーバスヘッドコーチが求める3ポイントシュートも得意な、200mのオールラウンダー。「シュートを打つことはできていますが、その前のシュートに持って行くまでのポジショニングなどをトムさんはすごく大事にしていました」という課題が見つかったとともに、プレーの正確性を意識しています。



 早くも滋賀レイクスでプレーする湧川颯斗選手(福岡大学附属大濠高校3年)。キャンプを通じて、「3ポイントシュートが一番必要だと感じました」。将来有望な194cmのビッグガードですが、「中村拓人さんや小川敦也さんといった大きなガードがいますので、いろんなプレーを盗んでいきたいです。まだポイントガードとしても、一選手としてもシュート力が足りていません。そこを上げていかないと、トムさんのバスケットにはついていけないと感じています」と先輩たちからも刺激を受けます。滋賀にはお手本となる日本代表のテーブス海選手がおり、「得点も取りながらまわりも生かせるような目指すべきプレーヤー像です」という環境も湧川選手を成長させています。

 コロナ禍によって国際試合が延期となっていた男子U22日本代表。網野友雄ヘッドコーチにとっても、今夏のFISUワールドユニバーシティゲームスでようやく初陣を迎えます。白鷗大学の指揮官として、この世代を熟知する網野ヘッドコーチら男子U22日本代表スタッフが、今回のキャンプメンバーの選考を行いました。「全員がプレーメーカーになることを目指しているので、サイズがあって動けて、3ポイントシュートがしっかりと打てる選手がベースになっています。また、男子日本代表につなげていくことが大事であり、所属チームでは大きい日本人選手が競争して、生き残っていくことは難しい面もあります。しかし、このようなキャンプに参加させることで自分の可能性を感じ、逆に課題もしっかり把握して、今後につなげてもらいたいです。ハングリーに上を目指してもらいたい思いで、身長が大きめのメンバーを選びました」というのが選考基準です。実際にホーバスヘッドコーチの指導を受けた選手たちは、「期待通りに動いていました。彼らにとって、トムコーチの目があることがすごく大事です。男子日本代表につながるかもしれないという意識が出ることで、行動が変わることもあり得ます」と網野ヘッドコーチは選手たちの成長を実感しています。

 190cmのポイントガード、小川敦也選手(筑波大学2年/宇都宮ブレックス)は、「足と頭をすごく使うキャンプでした。今までのアンダーカテゴリーではオンボールピックが主体でしたが、トムさんは5OUTで全員がオフボールスクリーンから動いて展開を作るところに違いがありました」と率直な感想を述べます。選考基準でもある3ポイントシュートにも長けている選手が多いことで、「自分がディフェンスを引きつけて、外の選手にパスを出すこともポイントガードとして必要です。特にペイントタッチをトムさんには求められています。今までは、ボールを運んだあとに一度パスを出したらそこでプレーが終わりになることが多かったです。今回、トムさんに学んだことで、自分のドライブも生かせるようになったと思います」と小川選手にとって刺激を得たキャンプになりました。現在2年生ですが、2021年のFIBA U19ワールドカップへ出場し、宇都宮ブレックスの特別指定としてBリーグのコートに立ち、経験を積んでいます。このキャンプに参加したからこそ、「世界を経験してきたポイントガードでもあるので、自分が引っ張って行く意識を持って、リーダーシップを発揮していきたいです」と精神的にも成長が見られました。



 高校時代はアンダーカテゴリーに縁がなかった山内ジャヘル琉人選手(大東文化大学)。いつもとは違う環境に「新鮮さを感じていますし、ここでバスケができることがとてもうれしいです」と顔をほころばします。ホーバスヘッドコーチはどの選手にも積極的にアタックし、シュートを打つことが求められており、「迷わずにプレーすることや、まわりの選手たちの得意なプレーも考えながらタイミングを合わせることなど、自分に合っているバスケットの考え方かなと感じました」という山内選手にとっては良いアピールができました。「高いレベルを肌で感じることができました。夢ではなく、目標として見える位置にいると今は感じています」と山内選手が言うように、参加した選手たちはあらためて日本代表入りを目指して努力し続けます。

 最後に、若い選手たちがさらなる向上を目指すために、アレハンドロヘッドコーチは以下のようにアドバイスを送ります。

「もっともっとたくさんのバスケを見て欲しいです。NBAを見る機会は多いかもしれませんが、それだけではなくヨーロッパにはスペインをはじめ、イタリアやセルビアなどなどいろんな国のリーグがあります。同じアジアの中には中国やフィリピンなどがあり、アメリカにもブラジルやアルゼンチンなど至るところでバスケが行われています。より多くのバスケスタイルを見ることで必ずプラスになり、レベルアップできます」