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男子日本代表:ディベロップメントキャンプレポート「3ポイントシュートは良い感触で決めることができ、そこが一番の武器」金近廉選手
 男子日本代表はこれまで同様に一気通貫の強化を目指し、2月6日(月)〜10日(金)の期間、高校生〜大学世代の若手選手を招集し、ディベロップメントキャンプを実施しました。このキャンプのテーマについて、男子日本代表のトム・ホーバスヘッドコーチは以下のように述べます。

「男子日本代表に携わってから1年半ほど経ちますが、1回目の合宿で選手たちは我々のスタイルを理解し、そして2回目になると、みんなが落ち着いて良いバスケができるようになっています。有望な若い選手たちにも同じ経験をさせておくことで、今後のトライアウトに招集したときにすぐに力を発揮し、良いチャンスがあると思います。日本代表が目指すバスケットを伝えること、そして私自身が若い選手たちを見たかったことが大きなテーマです」

 これまで男子日本代表選手たちには「ここではみんながファーストオプション」と伝え、積極的にゴールへ向かうことを意識づけしてきたホーバスヘッドコーチ。しかし、このキャンプに参加した選手たちに対し、「その話は全くしていません。大学と高校で活躍する選手たちは常にファーストオプションであり、みんながアグレッシブにプレーするメンタリティーを持っています」。キャンプ初日のミーティングでは、「ディベロップメントキャンプだが、来週からはじまるFIBAワールドカップ アジア予選Window6へ向けた男子日本代表合宿に招集する可能性もある」と伝え、そのチャンスをモチベーションとしながら集中した5日間となりました。

 Window6へ向かう男子日本代表候補の平均身長は191.3cm。このキャンプ参加メンバーは平均193.6cmと大きいのも魅力です。前任のフリオ・ラマスヘッドコーチが長期計画として、アンダーカテゴリーからサイズアップ、ポジションアップを提唱し、それが花開きはじめたのがまさにこの世代です。東野智弥JBA技術委員長は、「大きい選手もポジションレスでいろんな動きができるように、それを日本のスタンダードとして取り組んできました。今、ホーバスヘッドコーチになり、サイズのある選手たちのシュートレンジもより広がっています。日本人の特徴を生かしたオリジナリティーが、この世代からできあがってくると思っています」と種を蒔いてきました。196cmのスモールフォワード、金近 廉選手(東海大学2年)もその1人です。

 ホーバスヘッドコーチから「今の男子日本代表に足りない存在として、身長が高くて3ポイントシュートが打てて、ディフェンスもできる選手」という話しを受けた金近選手は、「自分はそこに当てはまっているかな」と自信に変えます。

「自チームとディフェンスの役割が違うので、そこで少し遅れてしまったり、うまくアジャストできていない部分もありました。それでも3ポイントシュートは良い感触で決めることができ、そこが一番の武器です。5OUTフォーメーションがベースであり、外からのシュートが大きな要素となるので、自分としてはトムさんのバスケットに合ってきているのかなと思っています」

 練習中だけではなく、その前後の空いている時間は積極的に話しかけ、「トムさんがどういう思いで取り組んでいるのか、どういう選手が欲しいのかを汲み取りながら今はできています。日に日に上達している実感もあり、それは自分だけではなくみんなが良くなっています」という金近選手。「ここがスタートであり、このキャンプで終わりではありません。自チームに戻ってからも評価され続けるので、気を引き締めてこれからもがんばっていきたいです」と新たな原動力にしています。



 特別指定として、すでにBリーグのコートに経つ選手も多数参加したこのキャンプ。広島ドラゴンフライズの中村拓人選手(拓殖大学4年)と三谷桂司朗選手(筑波大学3年)は、U16日本代表から数々の国際大会を経験してきました。190cmの三谷選手もアンダーカテゴリーではインサイドプレーヤーでしたが、現在はスモールフォワードへポジションアップ。「U16とU18での試合経験はありますが、そのときとは違うプレースタイルになっています。成長した姿を日本代表でも発揮できるように、意識を高く持って目指して行きたいです」と話し、成長した姿でアピールしていました。

 男子日本代表の入口に立ったポイントガードの中村選手も、「U16とU18を経験させていただいたことで、そこから日本代表に入りたいという意識が高まりました。今でもその目標は変わっていません。3ポイントシュートや速い展開などを求められているので、そこでいかに自分が良いパフォーマンスを発揮できるかが大事になります。常に練習の中からこだわっていきたいです」と目標が明確になりました。

 ホーバスヘッドコーチのバスケスタイルに触れた中村選手は、「教わっていることは本当にシンプルです」と言います。しかし、シンプルだからこそ難しく、「その中には何パターンものオフェンスシステムがあります。ポイントガードとして、状況に応じて判断し、発信していかなければなりません」と話し、身体的疲労だけではなく、頭も疲れるのがホーバスヘッドコーチのスタイルです。



 キャンプ開催中、フィリピン代表のカイ・ソット選手が広島に入団する大きなニュースが流れました。中村選手と三谷選手にとっては、2018年に行われたFIBA U16アジア選手権で勝てば世界への切符を手にできる大一番で、ソット選手を擁するフィリピンと対戦(FIBA YouTubeにて試合動画閲覧可能)。しかし、「あのときはリバウンドが本当に取れませんでした」と中村選手は振り返るとおり、70-72の2点差で惜敗。FIBA U17ワールドカップ出場に、あと一歩届かなかった悔しい経験をしました。これから同じチームになるのに対し、「不思議な感覚」と声を揃える2人。当時マッチアップした三谷選手は、「広島はリバウンドが今の課題でもあるので、強力なインサイドプレーヤーが来てくれたことで、これからの試合が本当に楽しみです」と期待し、ともに戦えることを中村選手も楽しみにしています。

 昨年6月に実施したディベロップメントキャンプから河村勇輝選手(横浜ビー・コルセアーズ)をはじめ、多くの若手選手が日本代表へ昇格し、活躍しています。今回も同様に、“飛び級”での男子日本代表選手誕生を期待するとともに、「自分に足りない部分を把握し、もしうまくいかなかったとしても次へのモチベーションにすることが、このキャンプの一番大きな意義です」と東野JBA技術委員長は述べます。今年の日本代表のテーマは『競争力』であり、ここで学んだことを継続していくことが大切です。

「力強く成長し続け、この世代から突き上げてポジション争いを激化させるようになったとき、男子日本代表はアジアの中で抜きん出た存在になり、そして世界を目指せるようになると思っています」