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【Jr.ウインターカップ2021-22 現地レポート】誰かを超えるのではなく、自分らしさを求めて
試合が終わる前から涙が溢れ出ていた。残り20秒。ビハインドは20点。それでもマイボールのスローインで彼女は大きな声を出した――まだ20秒あるよ!

「Jr.ウインターカップ2021-22 2021年度 第 2 回全国 U15 バスケットボール選手権大会」の女子 2 回戦、FURUTA Excalibur BBC (広島) はJ,sphere (愛知) に54-72で敗れた。

その差は18点。残り20秒からのオフェンスで最後のシュートを決めたのは、「まだ20秒あるよ!」の声の主、#15 白石弥桜である。身長182センチは今大会に出場する日本国籍の女子選手では最高身長。それでいてポストプレーだけでなく、ボール運びもするし、ドライブからのステップインを駆使して得点も量産する。この試合でも35得点・19リバウンド、そして 9 つのブロックショットを決めている。

終盤から溢れ出ていた涙が、試合後になってもなかなか止まらなかったのは、寂しさと悔しさが入り混じってのことだろう。寂しさは、この試合がチームメイトとプレーする最後の試合になったことへのそれである。悔しさは負けたことと、第 3 クォーターの開始早々に 4 つ目のファウルを犯し、その後、特にディフェンスで思い切ったプレーができなくなったことへの悔恨である。
「本当だったら、もっとみんなのカバーにいって、ブロックショットもして、シュートを防ぎたかったんですけど、ファウルが溜まってしまったら行けなくなってしまって、点を取っても、すぐに取り返されて……前半はまだ追いつけると思っていたんですけど、後半はちょっとずつ点差が開いてしまって……」



それでも彼女が見せた存在感は、彼女の未来に期待せずにはいられないものだった。特に左手だけでボールをコントロールして打つレイアップシュートはスケールの大きなプレーである。ステップスルーからのレイアップも圧巻と言っていい。その原点を聞くと、彼女はこう答えている。
「ステップはコーチもいろいろ教えてくれるんですけど、自分がセンタープレーで教わったことを外からのドライブインにも生かしました。ただステップを狙うというより、全体を見てパスもできるようにしつつ、フェイクをしたらディフェンスをかわせることに練習中に気づけたので、そういうところを自分で応用しました」
また女子日本代表として活躍している赤穂ひまわりが、ボールを動かしながらステップし、シュートに持ち込むプレーも参考にしていると言う。
「(大瀬一美) コーチも現役時代にステップなどを考えてプレーしていたとおっしゃっていたので、そういうことを自分もやろうと思って、教えてもらったことにプラスして、いろんなフェイクができたらいいなと思っています」
 こうしたスマートさも彼女の将来性に明るい兆しを差し込みそうだ。

むろん課題は多い。体の強さはこれから身につけなければいけないし、ジャンプシュートの精度もまだまだこれから。そのことは彼女自身が一番わかっている。
「高校に入るともっと当たりも激しくなると思うので、そこでもしっかり勝負するんですけど、ダメだったときにエルボーあたりでボールをもらって、シュートを決められたらいいかなと思っています」
エルボーと言わず、3 ポイントシュートまでエリアを広げていければ、さらにおもしろいのではないか。そう思わせる選手でもある。となると目指すはドライブなどで参考にした赤穂ひまわりだろうか? そう聞くと、白石は頬に涙の跡を残した笑顔でかぶりを振る。
「今は、自分の先輩や周りの人でいろいろ教えてくださる人がいるので、誰を超えるというよりは、いろんな人の話を聞いて、自分でいろいろ考えて、臨機応変に考えられる選手になりたいです」
このメンタリティーもまた、将来性に期待ができる彼女も持ち味である。