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【SoftBank ウインターカップ2021 現地レポート】一生懸命を認め合って28年ぶりの頂点へ
前日におこなわれた女子の決勝戦に続き、男子の決勝戦もまた、最後までどちらが勝ってもおかしくないゲームだった。ファイナルスコアは59-56。女子のそれよりもさらに接近したスコアで最後のブザーが東京体育館に響いた。

「SoftBank ウインターカップ2021 令和3年度 第74回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の男子決勝戦は、福岡大学附属大濠(福岡②)が帝京長岡(新潟①)を下して、28大会ぶり3回目のウインターカップ制覇を果たした。

勝敗を分けるような決定的な差はなかった。しぶとく、我慢強くプレーした帝京長岡は40分間、福岡大学附属大濠に大きな流れを作らせなかった。しかし福岡大学附属大濠もまた、しぶとく、我慢強くプレーして、逆転を許しても、自分たちを見失わなかった。

そんなゲームにわずか“3 点”の差を見出そうとすれば、決勝戦に勝ち上がるまでの道のりが、福岡大学附属大濠のほうがやや険しかったところにある。開志国際(新潟②)、市立習志野(千葉)、中部大学第一(愛知①)、正智深谷(埼玉)、そして仙台大学附属明成(宮城①)。中部大学第一は今夏のインターハイ王者であり、仙台大学附属明成は昨年度のウインターカップ王者である。彼らを倒しながら勝ち上がってきた自信が、決勝戦のわずかな差を生んだと言っていい。

福岡大学附属大濠の片峯聡太コーチも、選手たちが大会を通じて成長していったと認める。
「選手たちがどんどん自信に満ちあふれた表情になっていったと感じました。彼らにも伝えていたのですが、東京に入って大会に臨むころは80点くらいの状態でした。そこから試合ごとに学び、成長していくしかなかったわけです。初戦の開志国際に勝って、3回戦の中部大学第一と対戦するころには90点になっていて、準決勝の仙台大学附属明成から決勝戦にかけて100点にしていこうと。本当に試合を重ねるたびに、選手たちが学んで、自信をつけて、成長していった大会だったと思います」



そうした自信はまた、けっしてタレント頼みでもなかった。#13 岩下准平を筆頭に、エースの#14 湧川颯斗、スーパールーキーの#8 川島悠翔といった才能豊かな選手たちが脚光を浴びがちだが、それ以外の選手たち―― ベンチに入れなかった選手たちも含めて、チームとしての結束を求め続けたことが、28大会ぶりの結実につながったのである。

「大濠には川島のような能力のある選手もいれば、失礼ながらバスケットの力はもうひとつだけれども、一生懸命勉強して一般受験で入学してくる子もいます。私が37名の部員たちに常々言っているのは『我々がいる世界は一生懸命が必ず報われる世界じゃない。でも一生懸命を認める組織ではあろう』ということです。それは私自身がコーチングをしながら、一番大事にしていることでもあります。たとえ報われなくても、一生懸命にやっていることを認め合って、支え合って、組織として強くなっていこうというところが、大濠が一番大事にしているところなんです」

身長や高い運動能力、中学時代の経歴、アンダーカテゴリー日本代表歴など、注目すべき点を個々に持っている福岡大学附属大濠だが、そうした才能豊かな原石も磨かなければ輝きを得ることはできない。いや、これからも磨き続けなければ、彼らの夢の実現にもつながらない。

彼らが得た真冬の輝きは、到達点であり、出発点でもある――。