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【SoftBank ウインターカップ2021 現地レポート】桜花学園の3連覇に欠かせなかった”5点”
どちらが勝ってもおかしくないゲーム展開だった。前半を終えて同点、第3クォーターを終えても差はわずかに2点である。ファイナルスコアも61-57 ――。

「SoftBank ウインターカップ2021 令和3年度 第74回全国高等学校バスケットボール選手権大会 (以下、ウインターカップ2021)」の女子決勝戦は、桜花学園が京都精華学園を振り切り、3年連続24回目の優勝を果たした。

勝負を分けたのは、桜花学園が最後までチームディフェンスを崩さなかった点にある。むろん京都精華学園がそれを遂行できなかったわけではない。むしろ彼女らも一気に抜け出そうとする桜花学園を我慢強く守り抜いていた。ただわずかに4点、桜花学園のオフェンスが京都精華学園のディフェンスを上回った。

スポーツに「たれらば」はないのだが、もしあの “5点” がなければ、桜花学園は1点差で敗れていたことになる。あの “5点” とは、桜花学園#12玉川なつ珠が5分58秒の出場であげた全得点である。



第2クォーターの立ち上がり、#5伊波美空がみぞおちを打ちつけて、ベンチに下がらざるを得なくなったときに、玉川はコートへ入っていった。今大会、シックスマンとして活躍していた玉川だが、さすがのスクランブル発進には「緊張しました」と言う。

「緊張はしたけど、最後の試合だし、楽しんでやろうと思って、緊張を意識しないで頑張りました。コートでは自分ができることを精一杯やることだけを意識して、私はシュートが得意なので、打ったらすべて決めるという気持ちで打ちました」

緊張を推進力に変えて、あの “5点” を生んだのである。

ベンチでその姿を見ていた伊波も「玉川とはずっと同じポジションでお互いに助け合いながらやってきたので、交代したときでもすごく頼れるし、しっかり3ポイントシュートを決めてきてくれます。私がベンチに下がっても、絶対にチームをつないでくれると信じていました」と、安心して回復に集中できていた。

もちろん結果論ではある。玉川が決めなくても、誰かが5点を取っていたかもしれない。玉川による失点も、あるいは伊波か、違う選手なら防げたのかもしれない。しかし現実として玉川がコートに立ち、5点を決めたことが、微力かもしれないが、桜花学園の3連覇に貢献した。微力はしかし、無力ではないのである。

中学時代、全国大会を制し大会ベスト5にも選ばれた157センチは、名門校で過ごした3年間をこう振り返る。
「身長の小さい私が、周りは大きい選手ばかりの桜花学園に入って、できないことばかりでしたけど、小さくてもできることはたくさんあると思うから、それを徹底して、3年間やりきりました」

 大会アンバサダーの町田瑠唯選手 (富士通 レッドウェーブ / 東京2020オリンピック女子日本代表) が小さくても世界で通用することを示したように、玉川もまた自らの武器を伸ばしに伸ばして、ウインターカップで通用することを証明してみせた。

スタメンだけではない、小さな力もまた桜花学園のウインターカップ3連覇に欠かせない、強さの要因だった。