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【SoftBank ウインターカップ2021 現地レポート】3年生が残してくれた成長への道標
最後は懸念していた甘さが出てしまった。女王はそれを見逃さない。最後は完敗に終わったが、ここまで激戦を制しながら、一つひとつメインコートまで上り詰めたことは、間違いなく来年以降の財産になる。

「SoftBank ウインターカップ2021 令和3年度 第74回全国高等学校バスケットボール選手権大会 (以下、ウインターカップ)」の女子準決勝、昭和学院は桜花学園に72-110で敗れた。

敗因はけっして1つではない。強いて1つ挙げるとすれば「今日は甘さが出てしまった」ことだと昭和学院の鈴木親光コーチは言う。勝負に対する精神的な甘さがにじみ出れば、女王はそこをついてくる。わずかなほころびは、一気に大きな穴へと変わっていった。
しかし準決勝までの昭和学院に弱気な姿勢はなかった。初戦の高知中央戦を、残り2秒の劇的な逆転シュートで勝ち上がると、2回戦、3回戦も第1クォーターをビハインドでスタートさせながら、勝利をつかみ取っている。準々決勝の相手は岐阜女子である。どちらが勝ってもおかしくない展開のなかで、昭和学院は67-65、2点差でメインコートへの切符を自らの手でつかみ取った。

「夏よりも子どもたちのメンタルがちょっと強くなってきたのかなと思います。特に#9 田嶋優希奈や#5 石橋花穂がグイグイ引っ張ってくれるようになってくれて、チームとしてのメンタルが本当に成長してくれたと思います」
厳しい試合でも勝ち上がれた要因を鈴木コーチはそう振り返る。
「正直なことを言うと、インターハイから帰ってすぐにミーティングをして、『キャプテンを変えたほうがいいんじゃないか』と、選手たちに話し合わせました。でも#4 西ファトゥマ七南が継続してやると言ってきました。その西を含めて3年生は夏の悔しさもあって、その後は一本立ちしようという気が少しずつ見えていました。今日はまたちょっと甘さが出てしまいましたが、子どもたちなりに自分自身の道を探していってくれたことを成長だと思っています」



敗れれば、むろんそこには敗因があり、それが悔しさとなる。昭和学院の3年生たちはその悔しさをしっかりと受け止め、自分たちが変わる道を自ら選んだ。だからこそ、チームは変わることができたのである。
それは下級生たちにも波及していく。
「インターハイまでは下級生も上級生と1対1や試合をするときも簡単に負けていたのですが、夏以降、少しずつ下級生たちも上級生たちに立ち向かっていこうという気持ちが出てきていました。私自身もインターハイでは3年生しか起用できませんでしたが、ウインターカップで1年生が出られるようになったので、そこはよくなったところです」
高知中央戦の劇的な決勝シュートを決めたのは1年生の#15殖栗佳穂だった。夏のままの昭和学院であれば、彼女の出現はなかったことになる。決めた殖栗も素晴らしいが、彼女の力を引き出した3年生の成長がその陰にあることも忘れてはいけない。

鈴木コーチは悔しさをかみしめながらも、次を見据える。
「3年生が引っ張ってくれて、下級生がこのウインターカップのコートに立てた意味は大きいです。ただベンチに座っているだけでなく、試合に何分間も出させてもらえたわけですから。試合に出た下級生が来年以降、今回は 3年生に頼っていたところを、どのように変化させていくのか。私もそこを見ていきたいです」
敗れはしたが、この1年間の成長を見れば、昭和学院の選手たちもまた “勝者” である。3年生が残してくれた日々を下級生たちがどんな色に染めていくのか。昭和学院の戦いは続く。