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女子日本代表:オリンピック世界予選へ向けて始動!「今後の女性アスリートに何かを残すためのチャレンジ」大﨑佑圭選手
 オリンピックイヤーを迎え、1月20日(月)よりAKATSUKI FIVE 女子日本代表チームが始動しました。開催国として日本、そして2018年FIBA女子ワールドカップを優勝したアメリカはすでに東京オリンピックへの出場権が与えられていますが、その2チームも含めた16チームによる「FIBA 東京2020 オリンピック予選大会 -FIBA WOMEN’S OLYMPIC QUALIFYING TOURNAMENT 2020-(以下OQT)」が2月6日(木)より世界4都市で開催されます。現在FIBAランキング10位の日本はベルギーラウンドに出場し、地元ベルギー(同9位)、スウェーデン(同22位)、カナダ(同4位)と対戦。日本を含む3チームがオリンピック出場を懸けて争います。


 すでに出場権がある日本ですが、「オリンピックで金メダルを獲る目標を叶えるためのまだ旅の途中です」というトム・ホーバスヘッドコーチ。昨年、FIBA女子アジアカップを4連覇し、その後に行われたアジア・オセアニア地区でのオリンピック・プレ予選も3連勝し、負けていません。「昨年は選手たちがどんどんレベルアップしてくれました。その良い流れをこのOQTにも続けていきたいですし、今大会を通じてさらにレベルアップをしたいです」と目標に向かっていきます。

 17人の候補選手を招集し、「いつも通り負けたくはないので、ベストチームを作って臨みます」と練習中から戦いははじまっています。新たに北村悠貴選手 (日立ハイテク クーガーズ)、加藤優希選手、東藤なな子選手 (ともにトヨタ紡織サンシャインラビッツ)がチャンスを与えられるとともに、大﨑佑圭選手の復帰はサプライズでした。

 「金メダルを獲るためにも、オリンピックで一番良いチームを作ることを目指しています」とホーバスヘッドコーチは明言し、戦力になることを期待して迎えました。「もう一度挑戦したい」と大﨑選手から相談があったのは、約3ヶ月前。「まず最初に、簡単にポジションは与えないと伝えました。この2年間で多くの選手たちががんばり、成長もしています。もし、彼女が一生懸命トレーニングをして準備してくればチャンスを与えると話しました」とホーバスヘッドコーチは言い、大﨑選手にとってはトライアウトとなります。

 JX-ENEOSサンフラワーズでインサイドのコンビを組んでいた渡嘉敷来夢選手は、「オフェンスで相手の裏を取ったり、シールしたり、ノーマークのときには思い切って3Pシュートを打って決めていたので、本当に普通にプレーできています。トレーニングをはじめているとは聞いていましたが、まさかこのタイミングで、ここまで動けるようになっているとは思わなかったです」と驚きます。宮澤夕貴選手も「ポジションの取り方が上手ですし、身体をぶつけたときにやっぱり強いです。違和感がないですね」と復帰を歓迎します。

 「実は、『バスケットがしたい』という気持ちではなかったです」と大﨑選手は、復帰理由を語りはじめます。オリンピックが近づくにつれて盛り上がる中、「周りの人たちの期待する声があり、少しずつオリンピックを考えはじめました。自分のためというよりも、応援してくれる人たちの期待に応えたい」というのが原動力となったようです。しかし、2018年12月に出産し、子育てをする中での復帰は一筋縄ではいきませんでした。


「産後2〜3ヶ月が経った頃からたるんだ身体を戻したいと思って、ジムにはコンスタントに通っていましたが、オリンピックを目指して準備をはじめたのは昨年9月頃。子どもの預け先がクリアになりそうで、『よし、できるぞ』と思って始動しましたが、10月に入ると子どもの預け先がなくなり、結局私も動けなくなってしまいました。そのときは、ここで諦めるしかないかなとも思いました。でも、トムさんに相談し、預け先とともに自分をトレーニングしてくれるコーチの問題をクリアできれば、チャンスを与えて欲しいと伝えました」

 ご両親も働いているために頼ることができず、一時保育に預けながら自分の時間をなんとか確保する状況です。トレーニングに関しては、女子日本代表のスポーツパフォーマンスコーチである松野慶之氏がサポート。それも昨年12月後半からであり、準備期間は1ヶ月もありませんでした。「子育てをする中でトレーニングできる時間は限られます。最初に身体をチェックし、復帰に対して一番の問題点は持久力でした。それとケガ予防も重要です。優先順位をつけながらリスクを最小限にし、走るボリュームを最大限上げることをフォーカスしました」と松野氏がプログラムを組み、コンディションを上げていきます。

 バスケットボールに関しては母校の東京成徳大学高校とともに、恩塚亨アシスタントコーチの「東京医療保健大学にお世話になり、数回ですが学生たちとバスケをしながら準備してきました」。恩塚コーチの下を訪れたのは、松野氏とトレーニングしはじめたのと同時期であり、練習期間も1週間程度。最初に来たときの印象について、恩塚コーチは「ボールのスピードなどゲーム勘がズレており、キャッチのタイミングが合わなかったりしていました」が、練習を重ねるうちに「シュート感覚やバランス、タイミングを取り戻していきました」

 「出産した選手が戻ってくることは今の日本バスケには例がありません。どれだけできるのかは僕も未知数でしたが、そもそも優秀な選手であり、2年のブランクがある中でよくできているなと思います」と松野氏は感心し、恩塚コーチも「すごいですね。良い意味で普通です」と以前と遜色ないパフォーマンスを見せています。

 大﨑選手自身、アピールポイントとしてディフェンスを挙げ、ホーバスヘッドコーチもそこを期待しています。しかし、あくまでトライアウトであり、OQTへ向かう12人に入れなければ、所属チームがない現状ではこのチャレンジが早くも終わってしまうかもしれません。だからこそ、「先のことは分かりませんし、このロスターが決まったときに考えます。今はOQTに出ることだけを考えています」と集中していました。

 「このタイミングで妊娠・出産をし、東京オリンピックという大舞台を見過ごすことはできなかったこともひとつの理由です。このチャレンジが失敗しても成功しても、今後の女性アスリートに何かを残すことはできるのではないかと思って、チャレンジすることを決めました」(大﨑選手)

 女子日本代表は1月30日(木)まで国内での合宿を続け、12人に選考してOQTへ向かいます。