COLUMN

女子U19日本代表:第1次強化合宿 活動報告「世界を相手にフィニッシュ力を強化」
2021年度バスケットボール女子U19日本代表チームは5月17日(月)から20日(木)までの期間、ならはスカイアリーナ(福島県)にて第1次強化合宿を実施。年度が変わり、高校生たちは大学やWリーグへ進み、早生まれの選手たちもそれぞれのチームに後輩を迎えたことで、「前回合宿(2021年3月)から2ヶ月ほどしか経ってませんが自覚が芽生え、誇らしげな表情や言葉にも表れているように感じました」と藪内夏美ヘッドコーチを驚かせます。成長した姿を見せた選手たちは、8月7日より開催が予定されている 「FIBA 女子 U19 ワールドカップ2021 (ハンガリー)」のロスター入りを目指します。

●多くの経験を伝えながらリーダーシップを執る平下愛佳選手


 今合宿のテーマについて、薮内ヘッドコーチは「フィニッシュ力」を挙げました。これまでアンダーカテゴリーや若手中心の女子日本代表を率い、現在は東京2020オリンピックを目指す女子日本代表のアシスタントコーチを兼務する経験をもとに、世界との戦いを通じて感じるのは、「日本の速さやドライブでの突破力は世界と戦っても通用します。一方で、その後のフィニッシュのスキルが足りず、大きな相手に対しても日本で戦っているのと同じようなシュートになってしまうことで点数が取れないことが多いです」。女子日本代表のトム・ホーバスヘッドコーチもフィニッシュ力を課題とし、現在行われている合宿中でも徹底させています。同じ練習メニューを薮内ヘッドコーチは女子U19日本代表強化合宿にも取り入れ、選手たち自身の創造性を高めています。

 桜花学園卒業後、早稲田大学に進んだ江村優有選手は、今月行われた第55回関東大学女子バスケットボール選手権大会に出場。3位決定戦では48点・12リバウンドの活躍もあり、新人賞を受賞しました。「大学でのオフェンスはフリーランスになり、それは自分の得意なプレーだと思っています。得点が取れるガードが持ち味なので、この合宿でもしっかり生かすことを意識していました」と自信を持って臨んでいます。その一方で、「普通にシュートをしても海外では通用しないので、フィニッシュの部分は工夫するようにしています」という今合宿のテーマに取り組み、バリエーションを増やしています。2017年に行われたFIBA 女子 U18 アジアカップに出場した江村選手は、「スピードは通用し、ドライブからキックアウトの3ポイントシュートも効いていました。また、ペイントにアタックしないとディフェンスも動かないので、積極的にアタックをしながらその後の合わせなどをしっかりプレーしていきたいです」というイメージをしながら、世界との戦いに備えています。

●得点が取れるガード江村優有選手


 コロナ禍により国際大会がなかなか開催できず、その経験がほとんどない候補選手たち。2018年のFIBA 女子 U17 ワールドカップに唯一出場したのが平下愛佳選手(トヨタ自動車 アンテロープス)であり、「そのときの経験をみんなに伝えていきたいです」とチームに還元しています。国際大会こそ期間が空きましたが、平下選手自身はルーキーシーズンからしっかりとプレータイムを与えられ、Wリーグ優勝。また、東京2020オリンピック出場を目指す3×3女子日本代表候補選手でもあり、「3×3は試合中にコーチがいません。自分でゲームメイクをしたり、コーチングをしなければいけないので、ゲームを冷静に判断して声をかけることがすごく勉強になりました」と多くの経験をし、女子U19日本代表チームでもリーダーシップを発揮しています。

 世界7位に終わったFIBA 女子 U17 ワールドカップでは、「リバウンドやポストプレーを簡単にやられてしまいました。スピードやディフェンスの機動力では勝っているのに、身長の部分だけで負けたことがすごく悔しかったです」と平下選手は当時の課題を挙げます。その経験を踏まえ、メダル獲得を目標に掲げるこのチームに残るためにも「弱きになることなく、しっかりと強気にアタックをして行って勝ち切りたいです」と抱負を語りました。

 U19世代は平下選手同様に、世界のトップリーグやプロとして活躍する選手が多く出場します。現在、東京2020オリンピックへ向けた選考が行われている女子日本代表候補選手を見ても、1つ年上の奥山理々嘉選手(ENEOSサンフラワーズ)や東藤なな子選手(トヨタ紡織サンシャインラビッツ)が名を連ねており、2019年の女子U19日本代表メンバーです。女子U19ワールドカップでのメダル獲得が今の目標ですが、「その次のチャンスは来年に延期されたユニバーシティゲームスはもちろん、女子日本代表としてFIBAアジアカップにつながる可能性もあります。女子日本代表の練習をブレイクダウンして取り入れ、一気通貫の強化を担っています」と薮内ヘッドコーチは準備し、選手たちも次のレベルへつなげる意識が芽生えはじめています。