COLUMN

~宮地陽子のGO FOR 2020~海外日本代表候補選手奮闘記
“ウェルカムトゥNBA”

典型的な『ウェルカムトゥNBA』の瞬間だった。
メンフィス・グリズリーズと2ウェイ契約(※)を交わしている渡邊雄太が、
10月5日に出場したプレシーズン・デビュー戦でのこと。
試合終盤になってこの日初めて試合に出てきた渡邊は、コートに立って7秒後に、
対戦相手、アトランタ・ホークスのマイルズ・プラムリーに、上からダンクを見舞われたのだった。
試合後に渡邊は「ピック・アンド・ロールが逆サイドで起こって、
自分のヘルプも、あと一歩早めに出なきゃいけなかったかなという感じなんですけど、
NBAを見せつけられたというか…」と、状況を説明しながら苦笑した。
NBAでは試合中に数えきれないほど叩き込まれるダンクだが、
いきなり、やられ役としてプロデビューを飾ったわけだ。
別にそれが尾を引いたわけではなかったが、その後も3Pシュートを2本外すなど、何もできないうちに試合終了を迎えた。
試合後には、相手チームの選手や、チームメイトたちから散々からかわれた。
ホークスのジャスティン・アンダーソンは、彼がバージニア大のエースで、
渡邊がジョージワシントン大の1年だったときに対戦したこともある選手。
富樫勇樹(B.LEAGUE 千葉ジェッツ)の高校チームメイトという縁もあって、
以前から知る仲だ。そのアンダーソンも、試合後、嬉しそうにニコニコしながら渡邊に近づいてきて、「NBAへようこそ」と声をかけた。

ロッカールームに戻ってからは、チームメイトからもからかわれた。
NBA3年目のアンドリュー・ハリソンは、渡邊をからかった後に「みんなが一度はやられていることさ」と慰めの声をかけた。
これに対して渡邊は「気にしていないよ。次はブロックしてやる」と気概を見せた。
だてに競争の激しいアトランティック10カンファレンス(A10)の大学で4年間やってきたわけではない。
アメリカ慣れした渡邊らしいやり取りだった。
A10といえば対戦相手には2人、同じA10出身の選手が2人もいた。
1人はセントボナベンチャー大出身で、昨季のカンファレンスの最優秀選手にも選ばれたジェリー・アダムズ。
渡邊と同じように、2ウェイ契約の選手だ。もう一人はセントジョセフ出身のディアンドレ・ベンブリー。
渡邊より1学年上で、2年前に彼がドラフト1巡目指名でホークス入りするまで2シーズン、同カンファレンスで対戦していた。
NBAという最高レベルの舞台に立っても、過去に対戦した選手たちがいるということは、それだけで渡邊がアメリカに出てきてから積み重ねてきた年月を物語っている。
「親しい顔とも久しぶりにプレーできて、楽しかった」と、渡邊。
「大学時代に同じレベルでずっとやっていた選手と、改めてこういう場所で試合するっていうのは、
やっぱりすごく特別な思い、楽しい思いもあります。自分が積み重ねてきた年月も感じることがちょっとできました」と渡邊も感慨深そうだった。



■A10最優秀ディフェンス選手としての真骨頂

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